いくつかお尋ねがあったので、
5月8日発売の拙著『歴史で読み解く女性天皇』(ベスト新書、定価743円+税)の目次と、各章の「さわり」を紹介する。
第1章 危機に立つ皇室
「これまでの歴史において『男系』継承と『側室』制度は、“セット”で機能してきた…
だから、『男系』限定にこだわるのであれば、今は廃止されている『側室』制度と『庶出』継承の“復活”を主張するのが筋だ。
しかし、皇室も国民も、そんなことを受けいれるはずがない」
第2章 日本神話の中の女性
「世界各地の神話では、最高神は『男性』であるのが通例だ。
日本神話の最高神、天照大神が女性であることは、それらに比べて、かなり目立つ特色と言ってよい」
「シナの男系主義とは異なる血統観が、わが国には保持されていた…
それは、『男性だけ』の血統(男系)のほかに、女性の血統(女系)についても視野に入れる『双系』的な血統観だ」
第3章 女性君主のいる国・いない国
「わが国のように『双系』的な伝統を持つ国では、男女の区別より、天皇という地位の『重み』を優先するのは、
むしろ当然の態度と言えるだろう」
「5世紀後半以降、シナ文明の影響によって『男系』化へと大きく傾いていく中で、
それ以前からの『双系』と女性尊重の“伝統”も、長く保持できた」
第4章 女帝史の光と影
「『神聖王』と『世俗王』の“二重”統治は、シナ王朝や他国にはあまり類例のない、わが国のユニークな統治『形式』だろう」
「日本社会の基底的な特質は、1000年以上もの歳月を乗り越えて、みごとに維持されたと見てよいだろう。
東アジアにおける日本文明の『自立』的なポジションを示す“目安”の1つは、女帝の存在だった」
第5章 女性宮家は伝統の再発見
「『男系の男子』という法的な規定が設けられたのは、明治の皇室典範が歴史上、初めてだった。
それ以前、『養老令』は『女帝の子』にも皇位継承資格を認めていた」
「日本社会の基底にある『双系』(双方)的特質を認めてよいのであれば…『男系』限定の解除は、
シナ文明の長きにわたる影響をくぐり抜け、日本固有の伝統の“再発掘”を意味するとさえ、言えるのではないだろうか」
「皇室の存続を願うのであれば、向かうべき方向は、すでにはっきりと見えている。国民はそれを監視し、督促する義務がある。
国民統合の安定的な『軸』を、未来に確実に伝えていくことは、今を生きる日本人の責務だからである」
拙い内容ながら、一人でも多くの方に読んで頂きたいと思う。
なお恥ずかしながら、誤植の類が見つかった(何故かいつも刷り上がってから気づく)。
今、気づいているのは、以下の通り。
78ページ1行目「結婚相手」→「母親」
102ページ2行目「710」→「701」
177ページ9行目「これまでの」→「これまで」
181ページ7行目「男系に」→「男系で」
190ページ後ろから5行目「皇室」→「皇統」
同じページ後ろから1行目「ゆるがせられない」→「ゆるがせにできない」
192ページ2行目「で。」→「で、」
197ページ後ろから4行目「疑問」→「疑問符」
まだ他にあるかも。
我ながら、校正力のなさに嘆息せざるを得ない。
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